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【改正民法】絶対に覚えておきたい身近なお金の話

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民法改正が平成30年6月13日に可決され令和2年(2020年)4月1日から施行されることはご存知でしょうか?

およそ120年ぶりの大改正となります。

さすがに120年前に施行された法律なので現代の実情にそぐわない点が出てきているというのが改正の理由です。

今回は生活に密接な関係がある民法の中でもお金に関する部分をピックアップしておさらいしてみたいと思います。

法定利率の改正

法定利率とは当事者間での契約で定められていない場合に適用される利率の事です。

代表的なのは遅延損害金ですね。

 

お金の貸し借りを例とします。

銀行や消費者金融からの借金は契約で利率を決めている(約定利率という)のが通常です。

これが個人での貸し借りだと金額と返済期間までは定めることがあっても遅延損害金の利率までは定めていないというケースは多いかと思います。

このような場合で遅延損害金を請求したい場合に用いられるのが法定利率となります。

法定利率は改正前の現在は年利5%ですが改正後は3%(その後は3年ごとに見直しの変動制)となります。

お金の貸し借りのような契約以外だと交通事故の損害賠償や不倫の慰謝料などといった債権が挙げられますね。

利率が現代の実情にそぐわないという意味

前述したとおり今回の民法改正は現代の実情にそぐわないという理由で行われました。

低金利である現代において年利5%は時代錯誤感が強いですよね。

更に深く法律上の考え方を理解するために法定利率改正により受取額が大きく変わる交通事故の賠償金を例として挙げてみます。

中間利息控除

交通事故で死亡した場合や後遺障害がある場合にはもし事故が無ければ将来稼げたであろう金額(逸失利益)が損害として認められます。

これは後遺障害により減収があるとされる年数(労働能力喪失期間)と、どの程度減収があるか(労働能力喪失率)で計算されます。

しかし労働能力喪失率は喪失期間中の収入すべてが認められるわけではありません。

例えば年間100万の損害が今後10年続いたとしても、受け取る金額が1,000万円とはならないんですね。

 

本来は将来の損害であるものを先に受け取ることになるので早まった期間分の利率が差し引かれます。

これを中間利息控除と言います。

そしてその利率は法定利率を用いて計算することになるのです。

「将来の損害を先に受け取った分だけ法定利率分(5%)の運用ができる。だからその利率で運用した分をあらかじめ差し引く」というのが法律上の考え方です。

一般的な感覚からは理解しがたい話ですが・・・

だいぶ前置きが長くなってしまいましたが年利5%での計算では不公平が生じるというのが現代の実情にそぐわないと考えられる所以です。

法定利率の引き下げにより逸失利益は増える

以下の例で実際に受け取る賠償額がどれくらい変わるのか計算してみました。

年収は400万円で労働喪失期間は30年、喪失率は20%だとします。

中間利息についてはライプニッツ係数という将来利息を考慮した係数を用いての計算となります。

  • 法定利息5%を中間控除した場合

年収400万円×労働喪失率20%×ライプニッツ係数30年(15.37245103)=約1,229万円

 

  • 法定利息3%を中間控除した場合

年収400万円×労働喪失率20%×ライプニッツ係数30年(19.60044135)=約1,568万円

改正の前後で比べると受取金額が340万円も多くなります。

支払側は保険会社がほとんどなので多くの一般人にとっては有利になる事が多い法改正だと言えますね。

遅延損害金は減る

遅延損害金を受け取る立場の場合だと年利5%から3%へ減ってしまう今回の法改正は不利に働きます。

先の交通事故の件でも裁判上では遅延損害金は認められるので逸失利益が増えても遅延損害金が減ってしまうという事がありえます。

しかしそれは裁判上の話であり示談で遅延損害金を認めるケースは稀です。

かつほとんどが示談で終わる交通事故では影響が少なそうですが、裁判で判決までいくような案件では2%の差は大きそうです。

逆に借金をしている場合など債務者の立場だと有利に働きます。

消滅時効

「時効」と聞くと刑事事件の公訴時効(15年)を思い浮かべる方が多いかと思いますが、民事においても時効は存在します。

民事上の時効の一つである消滅時効が民法改正で大きく変わります。

現在の消滅時効は原則10年、商行為の債権は5年です。

一番身近でわかりやすい債権としては借金がありますね。

消費者金融などの貸金業者は商売としてお金を貸しているわけなので、業者からの借入金の消滅時効は5年間です。

対して商売ではない個人からの借金の消滅時効は10年間となります。

 

このように原則の10年間よりも短く定められている時効のことを短期消滅時効といいます。

そして現在では短期消滅時効は職業別でそれぞれ異なっています。

以下が短期消滅時効の代表例です。

労働者の退職金5年
医師・薬剤師の報酬3年
弁護士の報酬2年
労働者の賃金2年
宿泊代金、飲食代金、レンタル代金1年

職業別の短期消滅時効は廃止される

職業別で消滅時効が異なるのではわかりにくく合理性がないとのことで改正案では短期消滅時効は撤廃され原則5年間となります。

ただし借金の過払金などの権利発生に気付きにくい債権については10年間とされるようです。

特に賃金の時効が長くなることは多くの労働者にメリットがある

日本では労働法が軽んじられているせいか残業代未払いのトラブルは非常に多いです。

請求できる期間が長くなるという事はその分請求額も増えるのでこれまで以上に未払い残業代の訴訟は増えてくるでしょう。

2年分の未払い金が100万円ではやらなくても、5年分の250万円なら訴えを起こすという人は増えるかと思います。

それに経営者としては5年分の未払い債権を一斉に請求されては死活問題となるので法令順守を徹底せざるを得なくなるのはないでしょうか?

ただし現在労働基準法の改正は決まっていない

賃金2年、退職金5年という時効は労働基準法115条によって定められています。

そして現在この115条の改正は決まっていません。

詳しくは別記事にまとめてあるのでどうぞ。

未払い賃金・有給の時効が5年に!?労働基準法第115条は民法に合わせて改正となるか?

改正法での時効の適用はいつからか?

民法においては現行法が適用される2020年3月31日までに発生した債権の時効は現行法を適用するという経過規程となっているようです。

まず,改正民法施行日前に債権が生じた場合(施行日以後に債権が生じた場合であって,その原因である法律行為が施行日前に行われた場合を含みます。以下においても同様です。)の時効期間は改正民法施行後も旧法が適用され,改正民法の施行日以降に生じた債権の時効期間は改正民法が適用されることになります(附則10条4項)。

引用元 http://www.lawyers-kokoro.com/nagoyashi/bengoshi-blog/671/

 

未払い残業代についてはまだ労基法が改正されていないのでなんとも言えませんが以下のような資料もあります。

この改正がなされるにしても、経過措置が設けられて、施行時点で既に発生していた債権については、現行法が適用されるものと予想されます。

https://www.chosakai.co.jp/wp/wp-content/uploads/cb64e4473c9a23a49ef4a98b34d01004.pdf

改正法が施行されてすぐに過去5年分の未払い賃金が請求できるというわけにはいかなそうですね。

改正された際には要チェックです。

まとめ

  • 法定利息の引き下げにより逸失利益のような将来分を先に受け取るものは受取額が増える。
  • 遅延損害金が減るため債権者なら不利、債務者なら有利となる。
  • 消滅時効は原則5年間に統一される。
  • 特別法(労働基準法)は一般法(民法)より優先されるため賃金については改正待ち。

以上が改正民法の生活に関わってきそうなお金に関する部分でした。

大半の方はこれらに関わることなく日常生活を過ごすかと思いますが、トラブルはいつどのような形で降ってくるかわかりません。

いざという時に役立つかもしれないので覚えておきましょう。

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